賀曽利隆の「SSTR2022」参戦記

『地平線通信』2022年6月号より

●バイクでの北極点&南極点到達という偉業を達成した冒険家の風間深志さんは、10年前にSSTR(サンライズ・サンセット・ツーリングラリー)を立ち上げました。日の出時刻に太平洋岸を出発し、日の入時刻までに能登半島の「なぎさドライブウェイ」の千里浜にゴールするという参加者が自由自在のコースで走れるツーリングラリーなのです。最初は200人にも満たない参加者でしたが、毎年、倍々ゲームのように参加者が増え、何と10年後の今年は10000人を超えようかという勢い。今やライダーにとっては国民的行事であり、地元の羽咋市のみならず、能登全体でSSTRを歓迎してくれています。パワーあふれる石川県知事も千里浜に駆けつけてSSTRを熱く応援してくれています。

●5月21日から5月29日までの間で、何日かに分けての「SSTR2022」、カソリの参戦は5月24日でした。スタート地点は相模湾の大磯漁港。夜明けの岸壁に相棒のスズキVストローム250とともに立ちました。ゼッケンは100番。この100番というのは10年来変わらないゲストライダー、カソリのナンバーなのです。4時31分、日の出時刻とともにスタート。大磯漁港からは国道134号→新湘南バイパス→圏央道経由で中央道に入り、5時33分、談合坂SAに到着。ここでラリー帳に第1発目のスタンプを押しました。

●6時26分、中央道の双葉SAに到着。ここではラリー帳にスタンプを押した後、レストランで「ほうとう」を食べました。甲州路を走ると、無性に「ほうとう」を食べたくなるのです。7時45分、中央道の諏訪湖SAに到着。諏訪湖SAを過ぎると岡谷JCTで長野道に入り、8時18分、梓川SAに到着。残雪の北アルプスの山々を眺めながら「ざるそば」を食べました。信州そばを味わうのには「ざるそば」が一番。

●梓川SAを過ぎた安曇野ICで高速道を降りると、県道306号→国道147号で大町へ。大町から見る青空を背にした残雪の北アルプスは強烈な眺めで目の底に残りました。大町からは国道148号で糸魚川へ。佐野坂峠を越えて長野県から新潟県に入り、11時50分、北陸道の糸魚川ICに到着。出発点の大磯漁港から333キロ。「大磯→糸魚川」のルートでの本州縦断です。ここからは時間との勝負になるので、SAに寄ることもなく、北陸道をただひたすらに走ります。

●新潟県から富山県に入り、黒部、魚津、富山を通り、小矢部砺波JCTからは能越道を北へ。13時04分、能越道の料金所に到着。ここは「狼煙」まで行くかどうかを決めるSSTR一番の思案のしどころ。能登半島最先端の狼煙まで行けば距離を稼げるし、SSTR一番の面白さは距離を走ることだと思っているので、何としても狼煙までは走りたいと思うのです。しかし失敗すると、千里浜へのゴールが日没後ということになり、失格してしまうのです。この10年のSSTRを振り返るとカソリ、2015年5月30日に、自身の最長記録を打ち立てました。日の出時刻の4時15分に青森港をスタートし、18時50分に千里浜にゴール。19時05分の日の入時刻に間に合わせたのです。1222キロを走っての千里浜へのゴールでしたが、この時も能越道の料金所を出たところで狼煙まで行こうかどうしようか、さんざん迷いました。そんな迷いを振り払って、狼煙まで行ったおかげで、「1222キロ」を走ることができたのです。今回も2015年の「青森→千里浜」のシーンが頭をよぎり、「よーし、狼煙に行こう!」と決めたのでした。

●能越道で七尾へ。13時50分、七尾に到着。七尾は能登国の国府所在地。能越道から国道159号に出たところには能登国分寺跡があります。そこでは復元された南門を見ました。国道159号で七尾の中心街に入ったところは「古府町」の交差点。古府の地名こそ能登国府の証明です。七尾からは国道249号→能越道→のと里山海道を走り、のと里山空港ICへ。そこから快走路の珠洲道路を走り、珠洲では能登のシンボルの見附島を見ていきました。「軍艦島」で知られる見附島は見れば見るほど軍艦に似ています。最後はちょっと迷いやすいルートですが、15時45分に道の駅「狼煙」に到着。「やったね!」という気分です。最後のスタンプをラリー帳に押すと、能登半島最先端の岬、禄剛崎まで歩き、広い園地の先にある灯台を見ました。

●16時30分、道の駅「狼煙」を出発。のと里山空港ICまで戻ると、のと里山海道を一気に走り、千里浜ICを過ぎた次の今浜ICで降り、長くつづく「なぎさドライブウェイ」を走りました。胸にジーンとくるビクトリーラン。18時45分、千里浜にゴール。スタート地点の大磯漁港から744キロ。水平線に落ちていく夕日を眺めていると、「また、明日から頑張ろう!」という気持ちが心の奥底から湧き上がってくるのです。これこそがSSTRの大いなる魅力。「自分はまだまだやれる!」という自信がこみ上げてくるのです。19時01分、真赤な夕日が日本海の水平線に落ちていきました。(賀曽利隆)