鵜ノ子岬→尻屋崎[040]

第3回目(5)2011年9月11日 – 14日

気仙大橋仮橋が開通

 気仙沼から国道45号を北上。県境を越え、宮城県から岩手県の陸前高田市に入っていく。

 気仙川の河口にかかる気仙大橋は大津波で流された。そのため陸前高田の町に入っていくのには、気仙川沿いにさかのぼり、大きく迂回し、国道343号→340号で荒野と化した陸前高田の町中を走り抜け、気仙大橋の対岸に渡らなくてはならなかった。大変な時間のロスだった。それが仮橋の完成で震災以前と同じように陸前高田の町に入っていけるようになった。

 この気仙大橋仮橋の開通は当初、9月になってからだといわれていた。そげが8月中には通行できるようになったという。このあたりにも、復興にかける関係者の熱意が伝わってくる。気仙大橋仮橋の開通はそれほど大きな意味を持っている。

 今回の大震災では一番、といってもいいような大津波の被害を受けた陸前高田は壊滅状態。瓦礫はほとんど撤去され、うず高く積まれていた瓦礫の山も大分、処分されていた。

 しかし、あまりにもすさまじくやられたので、復興の芽すら見られないというのが現状だ。「日本三大松原」に次ぐくらいの高田松原は全滅し、7万本以上もあった海岸の松はすべて流された。その中でかろうじて残ったのが「奇跡の一本松」。何としても生き延び、陸前高田の復興のシンボルになってもらいたいものだが、潮をかぶった松は弱々しく、予断を許さないような状態に見えた。

 思わず「奇跡の一本松」の前では「がんばって。生き延びて!」と手を合わせてしまった。その近くから見る高田松原跡の光景はすさまじいもの。これがあの高田松原だったとは、どうしても思えない。

 陸前高田から通岡峠を越え、大船渡市に入っていく。

 海沿いの道を行き、魚市場でビッグボーイを停めた。うれしいことにすでに魚市場は再開されている。魚市場が再開されると町は活気づく。魚市場前にはコンビニの「ヤマザキ」が新しくオープン。そこでコンビニ弁当を食べ、昼食にした。

 JR大船渡線(運休中)の線路に沿って走り、大船渡の中心街へ。瓦礫はかなり取り除かれている。大船渡駅の周辺が大船渡の中心街だったが、町は壊滅状態。さらに大船渡線の線路に沿って走り、盛駅へ。そこが大船渡線の終点だが、盛駅の駅前通り周辺は大津波の影響をほとんど受けていない。ここでもわずかな高さの違い、地形の違いによる大津波の被害の有無、濃淡を見せつけられた。

 大船渡からさらに国道45号を北上。大峠、羅生峠を越え、吉浜湾の吉浜へ。ここまでが大船渡市になる。

 吉浜では吉浜川の河口に行った。堤防は大津波にやられ、かなり破壊されている。それにもかかわらず吉浜の集落にはほとんど被害が出ていない。その理由のひとつは昭和三陸大津波(1933年)のあと、集落を高台に移したからだ。そんな吉浜の河口から「津波石」が見つかった。昭和三陸大津波の記録が彫り刻まれた「津波石」が今回の大津波で土砂が取り除かれ、地表に姿を現したのだ。

 吉浜から鍬台峠を越え、釜石市に入る。

 これら国道45号の峠はすべて長いトンネルで貫かれているが、峠を越えると海が変る。鍬台峠を越えると唐丹湾になる。唐丹湾岸の小白浜の海岸は巨大防潮堤がなぎ倒された現場だが、高台下の瓦礫はきれいに撤去されていた。この破壊された巨大防潮堤を見ると、大津波のすさまじさを実感するが、その反面、半分はきれいに残っているので工事に手抜きはなかったのか…という思いにもとらわれる。

 釜石市内に入ると釜石港へ。地盤が沈下した影響なのだろう、釜石港周辺はかなりの地域が浸水していた。そんな釜石港の堤防を突き破って大型貨物船の「アジアシンフォニー」が乗り上げている。

 今回の大津波を象徴するのがこのような乗り上げ船。東北太平洋岸の全域で見られた乗り上げ船だが、震災から半年たって、かなりの数の乗り上げ船が撤去された。その中にあって最大の大物、釜石港の「アジアシンフォニー」は、まだそのままの姿で残っていた。(10月20日、「アジア・シンフォニー」は日本最大級のクレーン船によって吊り上げられ、海に戻された)

 釜石から大槌、山田と通り、宮古へ。

 大槌、山田はともに大きな被害を出したところだ。

 大槌では悲劇の現場、大槌町役場前のガソリンスタンドが仮店舗で営業を再開していた。思わずビッグボーイを停め、給油してもらった。

 山田では山田漁港周辺の巨大防潮堤を見てまわった。防潮堤は残ったのに、山田の中心街は壊滅状態。大津波はこの巨大防潮堤を軽々と乗り越えた。

 18時、宮古に到着すると、宮古駅の駅前でビッグボーイを停めた。宮古では大津波の被害は宮古港周辺に集中し、宮古駅周辺の町並みに被害は見られない。

 宮古駅前の公衆電話に入り、電話帳を見ながらの宿探し。ありがたいことに「グリーンピア三陸みやこ」が泊めてくれるという。

 すぐさまビッグボーイを走らせ、国道45号を北上。田老を通り、道の駅「たろう」を過ぎたところで国道45号を右折し、「グリーンピア三陸みやこ」に到着。宮古駅前から23キロ地点にある三陸海岸の段丘上の宿泊施設だ。大浴場の湯に入り、レストランで夕食を食べ、ホッとひと息ついた。