2021年版ツーリングマップル東北

 みなさ〜ん、ぜひとも書店で、『2021年版ツーリングマップル東北』を手にとって見てください。ぼくの1年かけた苦労が、この1冊に実っています。

テーマで巡った2021年版取材

 2021年版の『ツーリングマップル東北』の実走取材は、昨年の3月11日に始まり、11月16日に終わりました。

 相棒のVストローム250を走らせ、いくつかのテーマを設けて、東北各地を駆けめぐりました

 それらのテーマというのは、「鵜ノ子岬→尻屋崎」、「東北一周」、「奥羽山脈の峠越え」、「大河源流行」、「混浴温泉めぐり」、「林道走破行」、「白河探訪」というものです。

「鵜ノ子岬(福島)→尻屋崎(青森)」では、東北太平洋岸最南端の鵜ノ子岬から東北太平洋岸最北端の尻屋崎まで走り、東日本大震災で大きな被害を受けた東北太平洋岸の全域を見てまわりました。

「東北一周」では陸奥と出羽の国府をめぐり、本州最北端の大間崎と津軽半島最北端の龍飛崎まで行きました。

「奥羽山脈の峠越え」では、白河から青森まで、32峠を越えました。東北の背骨となる奥羽山脈は、太平洋と日本海に分ける中央分水嶺になっています。峠を越えるごとに、東北が見えてきます。

「大河源流行」では、阿武隈川と北上川の東北二大大河の流れを追いました。阿武隈川は源流から河口へ、北上川は河口から源流へと、Vストローム250を走らせました。

「混浴温泉めぐり」は、東北ならではの大いなる魅力です。東北には混浴温泉が何湯もありますが、東北には混浴文化がしっかりと根づいています。

「林道走破行」では、南会津の林道群を走りました。一昨年の台風の影響で、大荒れの林道が何本もありましたが、1日も早い復旧を願うばかりです。

「白河探訪」では、JR白河駅北側の小峰城、南湖公園と見てまわりました。ちょうど紅葉の最中で、東北の見事な紅葉を見ることができました。

表紙撮影に挑んだ3日間

 これらのテーマでまわった東北の写真は、2020年版までは小冊子で見ていただきましたが、2021年版からは本誌の写真ページになっています。この写真ページはすごくいいですよ。

 長期の実走取材の中でも、8月11日から8月13日までの「表紙撮影」は、一番のハイライトです。カメラマンの巣山悟さんと白河から青森まで走りました。その3日間は次のようなものです。

(第1日目)
 表紙撮影は国道115号旧道の土湯峠から始まった。抜けるような青空で、今年も巣山カメラマンとの旅は天気に恵まれる。奥羽山脈の峠を越えながら、表紙撮影のポイントを探していくのだが、猪苗代湖越しに見る磐梯山は目に残った。奥羽山脈の御霊櫃峠の頂上からは猪苗代湖を見下ろした。御霊櫃峠は今ではロードバイクでも走れる舗装林道だ。鳳坂峠、甲子峠を越え、白河ICからは東北道で白石ICへ。白石温泉に泊まったが、赤々と夕日に染まった白石川の流れが目に残った。

(第2日目)
 この日の表紙撮影は白石川の滑津大滝から始まった。東北を代表する名瀑だ。羽州街道の金山峠を越える。東北の山々の濃い緑を見ながら走る。東北の自然を存分に味わえる峠越えだ。上山から蔵王エコーラインで山形・宮城県境の刈田峠へ。峠周辺は数メートル先も見えない濃霧。宮城県側に下ると、霧は晴れ、青空が見えてくる。峠を境にしての劇的な変化。蔵王の名瀑、「不動の滝」と「三階の滝」を見て、笹谷峠、鍋越峠、鬼首峠を越えて秋田県に入った。ここでも峠を境にして天気は変わり、秋田県側は豪雨の様相。秋の宮温泉に泊まれてよかった!

(第3日目)
最終日は「青森まで行こう!」と、秋の宮温泉郷を5時前に出発。前夜の豪雨の名残で雲が低い。十文字の町から大森峠へ。ありがたいことに大森峠を越えるころには天気は回復した。つづいて巣郷峠、仙岩峠を越え、西根(八幡平市)から八幡平アスピーテラインを走った。青空を背にした岩手富士の岩手山の美しさといったらなかった。八幡平から花輪盆地に降りたが、稲田の向こうに連なる奥羽山脈の山並みは目に焼きついた。発荷峠を越え、夕日に照らされた十和田湖を見た。絶景だ。最後の峠、八甲田の傘松峠を越え、青森駅前の到着したのは19時30分だった。

 表紙撮影で巣山カメラマンは600枚以上の写真を撮りましたが、そのうち通常版の表紙を飾ったのは第3日目の写真で、奥羽山脈の大森峠を越え、岩手県側の国道397号を下っている途中のワンカットです。緑のトンネルを走り抜けていく気分は最高でした。

『2021年版ツーリングマップル東北』通常版の表紙写真。岩手県の国道397号で
『2021年版ツーリングマップル東北』通常版の表紙写真。岩手県の国道397号で(写真撮影:巣山悟)

 R版の表紙を飾ったのも第3日目の写真で、登山口の馬返しから見る岩手山です。裏表紙は八幡平アスピーテラインから見る岩手山。岩手富士(南部片冨士)の岩手山はどこから見ても絵になる東北の名山です。

『2021年版ツーリングマップル東北』R版の表紙写真。登山口の馬返しから見る岩手山(写真撮影:巣山悟)
『2021年版ツーリングマップル東北』R版の表紙写真。登山口の馬返しから見る岩手山(写真撮影:巣山悟)
『2021年版ツーリングマップル東北』R版の裏表紙写真。日本一の絶景路、八幡平アスピーテラインを走る(写真撮影:巣山悟)
『2021年版ツーリングマップル東北』R版の裏表紙写真。日本一の絶景路、八幡平アスピーテラインを走る(写真撮影:巣山悟)

 このほかの表紙候補になった写真も見て下さい。

土湯峠から見る磐梯山(写真撮影:巣山悟)
土湯峠から見る磐梯山(写真撮影:巣山悟)
猪苗代湖越しに見る磐梯山(写真撮影:巣山悟)
猪苗代湖越しに見る磐梯山(写真撮影:巣山悟)
羽州街道の金山峠で。同行してくれた渡辺哲さんと(写真撮影:巣山悟)
羽州街道の金山峠で。同行してくれた渡辺哲さんと(写真撮影:巣山悟)
蔵王エコーラインを行く(写真撮影:巣山悟)
蔵王エコーラインを行く(写真撮影:巣山悟)
成瀬川の渓谷を見下ろす(写真撮影:巣山悟)
成瀬川の渓谷を見下ろす(写真撮影:巣山悟)
花輪盆地から見る奥羽山脈の山並み(写真撮影:巣山悟)
花輪盆地から見る奥羽山脈の山並み(写真撮影:巣山悟)
発荷峠を越える。十和田湖がきれいに見えている(写真撮影:巣山悟)
発荷峠を越える。十和田湖がきれいに見えている(写真撮影:巣山悟)
夕日に染まる十和田湖(写真撮影:巣山悟)
夕日に染まる十和田湖(写真撮影:巣山悟)
阿吽の呼吸が裏目に出た!?

 今年の巣山カメラマンとの表紙撮影で忘れられないのは、その出会いです。

 我々は8時に東北道の白河ICで落ち合う約束をしたのですが、時間になっても巣山さんは来ません。時間に正確な人で、どんな時間でも、どんな場所でも、ドンピシャで待ち合わせポイントに来てくれる時間に正確な巣山カメラマンなので、8時ピッタリに電話しました。

「もしもし、巣山さん、今どこ!?」
「カソリさん、おはようございます。料金所を出たところで待ってますよ」
「え〜? 巣山さん、ぼくもいつものように、料金所を出たところにいますよ!」
 ここで初めて、我々は待ち合わせ場所を間違えたことに気が付いたのでした。

 白河と白石。

 カソリは福島県の白河ICだと思い込んでいたし、巣山カメラマンは宮城県の白石ICだと聞き違えたようなのです。

「賀曽利&巣山」は阿吽の呼吸で、簡単な電話一本でお互いにわかり合うことができるので、確認し合うようなこともないので、起きてしまったトラブルのようです。

 このあとの「賀曽利&巣山」は凄いですよ。

 即断即決。

 間髪を入れず、巣山さんには「集合場所を変えましょう。東北道の福島西ICにしましょう。集合時間は9時でお願いします!」と伝えました。

 白河ICから85キロ走り、福島西ICに到着したのは9時。集合場所を福島西ICに変えたのは大正解でした。まさに「巣山日和」で、福島の上空は抜けるような青空。吸い込まれそうになるほどの青さなのです。国道115号で土湯峠へ。ここで巣山カメラマンは大満足の写真を何枚も撮ることができました。

 ということで、奥羽山脈の峠越えの第1日目は、じつにおもしろい旅のドラマでした。

 みなさん、ぜひとも『2021年版ツーリングマップル東北』を持って、東北を駆けまわってくださいね。東北でお会いしましょう〜!

新年のごあいさつ

みなさん、あけましておめでとうございます。

 昨年の「新年のご挨拶」では、「みなさ〜ん、日本全国の一宮をめぐりましたよ〜!」とお伝えしました。それにひきつづいて、2020年では、日本全国の旧国の国府をめぐる「国府めぐり日本一周」を成しとげました。「やったね!」という気分です。

10月23日、2020年のSSTRに出発。朝日の昇る大磯漁港(神奈川)からスズキSV650を走らせ下関へ。下関から日本海を北上し、能登半島の千里浜にゴール。最後は輪島から帰ってきた。12日間で3842キロ走ったカソリの2020年版SSTR
10月23日、2020年のSSTRに出発。朝日の昇る大磯漁港(神奈川)からスズキSV650を走らせ下関へ。下関から日本海を北上し、能登半島の千里浜にゴール。最後は輪島から帰ってきた。12日間で3842キロ走ったカソリの2020年版SSTR

 11月28日、「国府めぐり日本一周」の最後となる「九州一周」を終えて帰ってきました。4月10日に「北海道一周」を開始して以来、7ヵ月半をかけた「国府めぐり日本一周」でした。日本全国、「五畿七道」の68ヵ国をめぐりました。北海道を入れれば、「五畿八道」の78ヵ国になります。残念ながら北海道11ヵ国目の千島国には足を踏み入れられませんでした。正味63日間で2万5945キロを走った「国府めぐり日本一周」でした

 Vストローム250を走らせての「九州一周」は、北九州市の門司港を出発点にしました。反時計まわりでの九州一周。まずは筑前の国府めぐりから始めました。筑前の一宮の筥崎宮(福岡市)と住吉神社(福岡市)を参拝し、国府所在地の大宰府へ。壮大な規模の「大宰府政庁跡」を歩きました。ここは筑前の国府というよりも、西日本最大の都跡といった方がいいでしょう。筑前国の国府跡はよくわかってはいないようです。総社も不明。国分寺跡には「文化ふれあい館」がありますが、そこには七重塔の模型が建っていました。七重塔は国分寺のシンボルなのです。国分尼寺跡には案内板がポツンと立っているだけ。近くの国分公民館の前に礎石が置かれていました。国分寺跡の西側は水城跡。ここには唐・新羅の侵攻に備えてつくられた大規模な土塁と濠が残っています。

 最後に大宰府天満宮に行ったのですが、コロナ禍などどこ吹く風といったところで、西鉄の大宰府駅前からの参道はあふれんばかりの人の波。拝殿の前には長い列ができていました。人影もまばらな大宰府政庁跡と、参道を埋め尽くす人、人、人の大宰府天満宮。あまりにも対照的な大宰府の2つの顔でした。

 筑前につづいて筑後へ。九州一の大河、筑後川を渡って久留米の町に入っていきました。久留米が筑後の国府所在地。まずは久留米の町並みを見下ろす高良山に登り、筑後一宮の高良大社を参拝しました。そのあとで山裾のJR久大本線の久留米大学駅に行きました。駅前には国府跡の「横道遺跡」の碑が建っています。駅の近くにある小さな祠の味水御井(うましみずみい)神社は筑後の総社。国道210号を越えた合川にある合川保育園前の広い草地は筑後の国府跡。国府は筑後に限らず、時代とともに変遷しているところが多いのです。最後に県道752号沿いの国分町へ。国分寺にちなんだ「国分」の地名がしっかりと残っています。国分日吉神社に隣接して国分寺跡があります。現行の国分寺もあります。国府、総社、国分寺が「国府めぐり」の3点セット。この3点セットを探しまわり、見つけていくのが「国府めぐり」の一番のおもしろさといっていいでしょう。

 久留米から筑後川を渡って佐賀県に入りました。筑後川が筑後・肥前の国境になっています。肥前の一宮、千栗(ちりく)八幡宮と與止日女(よどひめ)神社を参拝したあと、肥前の「国府めぐり」を開始。長崎道の佐賀大和ICのすぐ近くに国府跡があります。南門が復元され、前殿、正殿、後殿の跡を見てまわりました。西脇殿跡、東脇殿跡もあります。国府跡の「肥前国庁跡資料館」を見学。ビデオでは肥前の国庁(今でいうところの佐賀県庁)を詳しく紹介していますが、中央から送られてくる国司(今でいうところの佐賀県知事)が絶大な力を持っていたことがよくわかります。国府跡の近くには国分寺跡、国分尼寺跡があります。総社は廃絶していました。国府跡から国分尼寺跡、国分寺跡を通る細道は古代の西海道なのです。

 佐賀からは背振山地の観音峠を越えて唐津へ。唐津東港からフェリーで壱岐の印通寺港に渡り、壱岐の国府をめぐました。

 壱岐の郷ノ浦港からは対馬の厳原港にフェリーで渡り、対馬の国府をめぐました。

 厳原は対馬の国府所在地ですが、3年前の「70代編日本一周」で来たときは韓国人旅行者であふれがえしていました。それが今回はまるでフーッと吹き消したかのように、韓国人旅行者は消えていました。

 厳原からフェリーで博多港へ。福岡に戻ると、肥後の国府(熊本市)、薩摩の国府(薩摩川内市)をめぐり鹿児島へ。鹿児島からは大隅の国府(霧島市)、日向の国府(西都市)、豊後の国府(大分市)、豊前の国府(みやこ町)をめぐって出発点の門司港に戻ってきたのです。「九州」といいますが、このように本土の9ヵ国と、壱岐、対馬の島国2国があるので、九州は「十一州」なのです。

 最後の国府となった豊前の国府は、「京都(みやこ)郡みやこ町」にあります。旧豊津町は合併してみやこ町になりましたが、郡名にしても町名にしてもすごい地名ではないですか。まさに「ここが豊前の都ですよ」といっているようなものです。整備された国府跡の豊前国府跡公園では毎年、「豊前国府まつり」が開かれています。千何百年もの歴史を越えて、国府は今の時代でもしっかりと生きつづけ、大いなる誇りになっているのです。

「日本は旧国で見ていくのがおもしろい!」
 と、改めてそう思わされた「国府めぐり日本一周」でした。

「国府めぐり日本一周」の最後を飾る「九州一周」の帰路でVストローム250は、15万キロを突破しました。

11月28日、宍粟市(兵庫)の国道29号で、Vストローム250、15万キロ達成!
11月28日、宍粟市(兵庫)の国道29号で、Vストローム250、15万キロ達成!

 70歳の誕生日を迎えた日、2017年9月1日に出発した「70代編日本一周」から3年3ヵ月での15万キロ突破です。今年は20万キロキロを目指します。

「国府めぐり日本一周」を終えて、新たなステージに立ったような気分のカソリ、今年も新たな発想で日本を世界を駆けまわりたいと思っています。

2021年1月1日
賀曽利隆

2020年版ツーリングマップル東北

 今日(3月3日)は一年で一番うれしい日です。東京・麹町の昭文社本社で、『ツーリングマップル』編集長のM氏から出来上がったばかりの『ツーリングマップル東北』をもらったからです。1年がかりで作り上げた『ツーリングマップル東北』。帰りは小田急線の「ロマンスカー」に乗って、解禁した缶ビールを飲みながら『ツーリングマップル東北』の1ページ、1ページを見ていくのでした。思わず笑みがこぼれてしまうのです。

 これは『ツーリングマップル東北2020年版』のカソリの巻頭言です。

2020年版に寄せて

 2020年版の実走取材は2019年6月1日に開始した。9月4日までの間で5回にわたって東北全域を駆けまわり、30日間で10232キロを走った。しかしこれは公式の実走取材で、「みちのくライダー・カソリ」は1月から12月まで、1年を通して東北各地を走りまわっている。東北はそれほどまでに面白く、魅力的なのだ。特筆すべきは鳥海山と岩木山の2名山に登ったことだ。鳥海山では出羽の一宮の大物忌神社本社、岩木山では津軽の一宮の岩木山神社奥宮を参拝した。

 3月11日には東北大平洋岸最南端の鵜ノ子岬を出発し、東北太平洋岸最北端の尻屋崎まで走った。これが東日本大震災以降、第22回目の「鵜ノ子→尻屋崎」になる。夏の実走取材では第23回目の「鵜ノ子岬→尻屋崎」を走った。「鵜ノ子岬→尻屋崎」はこれからもずっとつづけるつもりだ。

 このようにして1年をかけて東北各地を走りまわって得た情報を『ツーリングマップル東北』に反映させています。ということでみなさんには、ぜひとも最新の『ツーリングマップル東北』を見てもらいたいのです。これを持って東北に向かって欲しいのです。東北ツーリングの途中でカソリを見かけたら、気軽にお声をかけてくださいね。

(賀曽利隆)

超晴男コンビ、カソリ&巣山の決断


 6月1日から9月4日までの『ツーリングマップル東北』の実走取材のうち、6月18日から6月20日までは巣山カメラマンが同行してくれました。

 巣山カメラマンとは6月18日6時に国道7号の新潟・山形県境で落ち合いました。

 第1日目は山形・秋田県内の日本海側を走りました。鳥海山や男鹿半島がメインで、能代に泊まりました。

 第2日目は秋田・青森県内の日本海側を走り、津軽半島最北端の龍飛崎まで行きました。龍飛崎から青森へ、青森からさらに弘前まで行って泊まりました。

 第3日目は岩木山、八甲田山、奥入瀬渓流、十和田湖、八幡平とまわり、最後は岩手山の焼き走り。東北道の西根ICで巣山カメラマンと別れたのです。

 このようにして巣山カメラマンは3日間同行してくれたのですが、第1日目では455枚、第2日目では399枚、第3日目では298枚と、合計すると1152枚もの写真を撮ってくれました。そのうちの3枚の写真だけが表紙に使われました。

 ということで表紙の写真ですが、通常版は八甲田山(青森)です。

『ツーリングマップル東北2020年版』の通常版表紙の写真(撮影:巣山悟)
『ツーリングマップル東北2020年版』の通常版表紙の写真(撮影:巣山悟)

 ここは酸ヶ湯温泉の「まんじゅうふかし」のすぐそばで、正面に見えているのは八甲田山の硫黄岳(1360m)です。酸ヶ湯温泉の地獄沼前の小道を入ったところにあります。温泉の蒸気の通るベンチに座るとポカポカと、じつに気持ちよく、ゴロンと横になって5分寝をしました。巻末の写真ページ、6ページの「カソリの轍2020」には、「まんじゅうふかし」で5分寝する姿が巣山カメラマンによって撮られています。小冊子で寺崎愛さんが描いてくれているカソリのイラストも、そのときのものです。

酸ヶ湯温泉の「まんじゅうふかし」で5分寝するカソリ(撮影:巣山悟)
酸ヶ湯温泉の「まんじゅうふかし」で5分寝するカソリ(撮影:巣山悟)

 この表紙写真はまったくの偶然から生まれたものです。「まんじゅうふかし」でゴロンと横になり、5分寝を楽しんだあと、硫黄岳をバックにした走行写真を撮ろうということになりました。そこでバイクを回転させたのですが、その瞬間の写真なのです。ぼくはまったく撮られたのがわかりませんでした。そのときの撮ろうとした写真は、「カソリの轍2020」の「まんじゅうふかし」の次の写真、硫黄岳を背にして、こちらに向かってくる写真だったのです。このような偶然の一瞬を見逃さずに撮った巣山カメラマンはさすがです。また、そのような写真を選んだ編集部もすごいと思います。

八甲田山の硫黄岳をバックにして走るカソリ(撮影:巣山悟)
八甲田山の硫黄岳をバックにして走るカソリ(撮影:巣山悟)

 次にR版ですが、表表紙は男鹿半島(秋田)です。ここは男鹿水族館GAOのすぐ近くの登り坂のコーナーで、背景の海は戸賀湾です。ここからの男鹿半島西海岸は東北のハイライトシーン。裏表紙は山形県の三瀬海岸(山形)です。国道7号の三瀬の交差点からわずかに入ったところにこのような世界があります。三瀬海岸の巨岩・奇岩には目を奪われます。

『ツーリングマップル東北2020年版』のR版表表紙の写真(撮影:巣山悟)
『ツーリングマップル東北2020年版』のR版表表紙の写真(撮影:巣山悟)
『ツーリングマップル東北2020年版』のR版裏表紙の写真(撮影:巣山悟)
『ツーリングマップル東北2020年版』のR版裏表紙の写真(撮影:巣山悟)

 ここでカソリ&巣山カメラマンのコンビのすごさを紹介しましょう。

 巣山カメラマンとは6月18日の午前6時に国道7号の新潟・山形の県境で落ち合ったといいましたが、最初は山形県内の日本海側を一番のメインテーマにするつもりでした。裏表紙になった三瀬海岸をはじめ、由良から加茂への庄内夕陽街道、湯野浜温泉、最上川河口、酒田、鳥海山と、どれもが表紙になってもおかしくない写真を多数、撮りました。道の駅「鳥海」で昼食。この頃から天気が急に怪しくなってきたのです。この時点で、北は晴れています。超晴男コンビのカソリ&巣山カメラマンはすぐに決断し、高速道を使って一気に男鹿半島へと舞台を移したのです。

能代の米代川河口に落ちる夕日(撮影:巣山悟)
能代の米代川河口に落ちる夕日(撮影:巣山悟)

 これが大正解。男鹿半島は晴天で、きれいな青空が広がっていました。臨機応変さが我々の大きな武器。そのおかげで男鹿半島の表紙写真を撮れました。その日の米代川の河口に落ちていく夕日はすばらしいものでした。2019年版表紙が下北半島の夕日でしたので、残念ながら2020年版では表紙になりませんでしたが、夕日には徹底的にこだわるカソリ&巣山カメラマンなのです。

「東日本大震災」から9年目の3月11日には2020年版の『ツーリングマップル東北』を持って、第25回目の「鵜ノ子岬→尻屋崎」に行ってきます。2021年版の『ツーリングマップル東北』に向けて目を大きく見開いて、いろいろなものを見てきますよ。

ツーリングマップル東北 2019年版発売

▲3月24日、クレタパブリッシング「アンダー400」の林道取材時収録され、編集担当の谷田貝さんのフェイスブックに投稿された動画です
今日(3月21日)は一年で一番うれしい日です。一年がかりで作り上げた『ツーリングマップル』の完成記念祝賀会(これを忘年度会と称しています)が開催されるのです。 『ツーリングマップル』は北海道、東北、関東・甲信越、中部、関西、中国・四国、九州・沖縄の全7巻から成っていますが、その中から「表紙大賞」が選ばれるのです。『ツーリングマップル東北』の表紙撮影には巣山カメラマンが同行してくれていますが、2人してひそかに、いやいや声を大にして、「今年の表紙大賞は東北だね」といいあっています。今年(2019年版)の『ツーリングマップル東北』の表紙は大判のR版も、通常サイズの通常版も、素晴らしいものです。
これは『ツーリングマップル東北』2019年版のカソリの巻頭言です。
 2017年9月1日、我が70歳の誕生日を期して「70代編日本一周」に旅立った。東日本編と西日本編の2分割でまわった日本一周は12月17日に終えたが、走行距離は2万5296キロ。そのすぐ直後の12月20日には「70代編日本一周」の第2部として「テーマ編」を開始した。様々なテーマで日本各地を駆けめぐり、2018年12月31日で終了させたが、1年で6万3648キロを走った。この中には『ツーリングマップル東北2019年版』の実走取材も含まれている。ということで2019年版には例年以上の距離を走った東北の最新情報が載っている。「日本一周」での「東北一周」、「実走取材」、「林道走破行」、「中央分水嶺の峠越え」などで「東北一周」を繰り返したが、そのたびに東北にどんどんはまり込んでいく自分を強く実感するのだった。東北はそれほどにおもしろい!
(賀曽利隆)
『ツーリングマップル』の実質的な実走取材は夏の30日間ですが、『ツーリングマップル東北』の2019年版の実走取材は、昨年の6月3日にスタートさせました。相棒はスズキのVストローム250です。
1 表紙撮影編 2887キロ
第1弾目は6月3日から6月8日までの6日間で、そのうちの3日間は巣山カメラマンとの表紙撮影でした。東北・太平洋岸最南端の鵜ノ子岬を出発点にし、太平洋岸を北上したのですが、昨年同様、今年も3日間、晴天でした。カソリ&スヤマは驚異の「ハレ男コンビ」なのです。 巣山さんとは青森で別れましたが、我々の合言葉は表紙候補の写真を1枚でも多く撮ろうということでした。巣山さんの写真に対する情熱にはすごいものがあります。巣山さんと別れたあとは日本海側を南下。第1弾目は海岸線ルートでの「東北一周」で、最後は新潟から東京に戻ってきました。走行距離は2887キロでした。
2 南部編 1578キロ
第2弾目は6月15日から6月19日までの5日間で、「東北南部編」でした。福島県の浜通り、中通り、会津がメインでした。その途中では我が定宿、木賊温泉の民宿「若松屋」に泊まったのですが、新潟の佐藤久夫さんと落ち合い、一緒に泊まりました。 佐藤さんは日本全国のダムカードを1000枚以上も集めている人。今年も佐藤さんから東北の新しくダムカードを配布しはじめたダム、10ダムを教えてもらい、昨年にひきつづいて、全ダムのダムカードをゲットしました。2019年版にはこれらの新しい10ダムのダム情報がのっています。第2弾目の走行距離は1578キロでした。
3 東京〜青森編 2525キロ
第3弾目は6月21日から6月27日までの7日間で、「東京〜青森」の往復でした。まずは「水戸街道編」。国道6号の水戸街道は水戸を過ぎると陸前浜街道になりますが、宮城県の岩沼までの全宿場をめぐりました。残念なのは二輪車通行禁止の「富岡〜浪江」間で、この間は常磐道で迂回しました。まあ、それはおいて、2019年版には陸前浜街道の全宿場がのっています。 「福島〜米沢」間では東北中央道の新しく開通した区間を走りましたが、無料供用中ということもあって、交通量の多さには驚かされました。岩手県に入ると、『ツーリングマップル』読者の千葉さんに教えていただいた絶景ルートの「栗駒焼石ホットライン」や一関周辺の田園地帯を走り、盛岡では「わんこそば」に挑戦。駅前の「東家」で食べたのですが、結果は120杯。まあ、100杯を超えたのでヨシとしましょう。 この頃はサッカーのワールドカップのま最中。眠い目をこすって夜明けの試合を見ていました。第3弾目の走行距離は2525キロでした。
4 会津〜水戸〜三陸編 1348キロ
第4弾目は7月2日から7月4日までの3日間で、まずは水戸から会津若松までの国道118号を走破しました。つづいて水戸から岩沼までの国道349号を走破しました。 岩沼から三陸海岸へ。旧野蒜駅の駅舎内には「震災復興伝承館」があるのですが、ここで案内してくださった小峰香織さんは東日本大震災の大津波で流され、必死の思いでポリタンにつかまって生き延びたといいます。 東名運河を越えたところで、浮いていた畳の上にのって野蒜小学校近くまで流され、そこで助かったのです。背中には大けがをして、その後、石巻の病院に入院しました。小峰さんのあまりにもすさまじい津波体験には、背筋の凍りつくような思いをするのと同時に、東日本大震災の大津波のすごさをあらためて感じるのでした。第4弾目では石巻で折り返して東京に戻りましたが、走行距離は1348キロでした。
5 山形南部峠越え編 1171キロ
第5弾目は7月11日から7月13日までの3日間で、「山形県南部の峠越え編」。飯豊町では添川温泉の日帰り湯「しらさぎ荘」に泊まったのですが、ここは宿泊も可。温泉も宿泊施設もなかなかいいところなのです。 この時、ぼくはひらめきました。『ツーリングマップル東北』には多数の日帰り湯がのっていますが、そのうちの宿泊できるところには「宿泊可」をいれようと決めたのです。ということで2019年版には宿泊可の日帰り湯がかなりのっています。 ここではうれしい出会いがありました。地元のヨシさんが訪ねてきてくれたのです。ヨシさんに教えてもらった長井の総宮神社に行きました。ここは由緒ある神社でこの地方の総社になっていますが、「バイク神社」としても知られています。宮司の安部義朋さんは大のオートバイファン。愛車のスズキGSX1100Sカタナで1日1000キロを走ることもあるそうです。 ということで2019年版にはコメントを入れて、長井の総宮神社をのせています。「MINI BOOK」の写真ページには阿部さんにも登場してもらっています。最後は高畠から東京に戻ったのですが、第5弾目の走行距離は1171キロでした。
6 中央分水嶺峠越え編 2489キロ
第6弾目は7月19日から7月22日までの4日間で、「東北の中央分水嶺の峠越え編」です。栃木・福島県境の山王峠を皮切りに、次々と奥羽山脈の峠を越えていきました。東北では奥羽山脈がほぼ中央分水嶺になっています。 福島県内の9峠を越えて福島に泊まり、翌日は山形の1峠、宮城・山形県境の5峠、宮城・秋田県境の2峠を越えて一関に泊まり、翌々日は岩手・秋田県境の5峠を越え、岩手の1峠を越えて五戸に泊まりました。 最終日には青森の2峠、秋田の1峠、青森・秋田県境の1峠を越えて青森まで行きました。全部で27の中央分水嶺の峠を越え、最後は青森料金所から東京までの東北道の一気走り。第6弾目の走行距離は2489キロでした。
7 南会津編 827キロ
最後の第7弾目は7月31日と8月1日の2日間で「南会津編」。温泉をめぐりましたが、岩瀬湯本温泉「湯口屋旅館」の湯は印象に残りました。走行距離は827キロでした。 こうして30日間の「東北実走取材」を終えたのですが、Vストローム250の全走行距離は1万2817キロ。Vストローム250は1万2817キロをノントラブルで走りきってくれたのです。
「カソリの道2019」はぜひとも見ていただきたいページです
「東北命!」のカソリは、30日間の「東北実走取材」のみならず、1年をかけてまわっています。ことあるごとに東北に行くようにしています。とくに2019年版では、1年4ヵ月に及ぶ「日本一周」の中で東北一周をくりかえしましたので、東北の春夏秋冬を見ることができました。東北の紅葉シーンとか雪景色も見てもらいたいといつも思っているのですが、2019年版ではそのうち「MINI BOOK」の写真ページで東北ならではの紅葉シーンを載せています。 2019年版でうれしいのは、みなさんからの投稿写真がのっていることです。見開きページで10点の写真ですが、どれも旅心をさそうものばかり。2020年版ではさらにページが増えることを期待するばかりです。 巻末の「カソリの道2019」はぜひとも見ていただきたいページです。堂々!?の8ページで下北半島を一周しています。カメラマンの巣山さんは3日間、同行してくれましたが、そのうちの第3日目の写真なのです。朝の5時45分に三沢の太郎温泉を出発し、夜の8時45分に青森駅前にゴールしました。 青森駅前では巣山カメラマンとの涙?の別れ。カソリはそのあと弘前で泊まりましたが、巣山さんは東北道を夜通し走って東京に帰っていきました。我々はこのようなことを平気でやっています。東北を自由自在に駆けまわっての実走取材をしています。 とにかく走る、より広いエリアを走る、より長い距離を走る、それを東北実走取材の基本にしています。1本でも多くの道を走って、その結果をみなさんにお伝えしたいという気持ちでやっています。 ということでみなさん、『ツーリングマップル東北』の2019年版をよろしくお願いします。
ツーリングマップル
ツーリングマップルR

新年のごあいさつ

みなさ〜ん、あけましておめでとうございます。

 2017年12月17日、東京・日本橋にゴールして、カソリの「70代編日本一周」(第1部)を終えました。94日間で2万5296キロを走った「日本一周」でした。それから4日後の12月21日に、「70代編日本一周」の「テーマ編」の第2部をスタートさせたのです。

 12月21日の「ヤビツ峠越え(丹沢)」を皮切りに、
  「三浦半島一周」
  「江ノ島探訪」
  「朝比奈峠越え(鎌倉)」
  「大楠山(三浦半島最高峰)登頂」
  「箱根スカイライン」
  「伊豆スカイライン」
  「大山登頂」
  「大山街道」
と大晦日まで毎日、相棒のVストローム250で走りつづけました。

 2018年になってからは初詣、初日の出、初富士、相模の神社めぐりの「元日ツーリング」に始まり、
  「富士山一周」
  「東京探訪(東京駅)」
  「伊豆半島一周」
  「東京探訪(江戸城)」
  「正丸峠越え」
  「高麗山登頂」
  「小田原探訪」
  「箱根峠越え」
  「足柄峠越え」
  「大山街道(伊勢原→三軒茶屋)」
  「安房探訪」
  「弘法山登頂」
  「山伏峠越え」
  「雛鶴峠越え」
  「真鶴探訪」
  「東海道(平塚宿→日本橋)」
  「東京探訪(品川宿)」
  「東海道(沼津宿→府中宿)」
  「大山街道(二宮道)」
  「相模川探訪(河口→昭和橋)」
  「相模川探訪(昭和橋→小倉橋)」
  「篠窪峠越え」
  「国道走破行(超短国道編)」
  「相模川探訪(小倉橋→日連大橋)」
  「相模川探訪(日連大橋→山中湖)」
  「鶴峠越え」
  「小仏峠越え」
  「高麗峠越え」…
と、徒歩旅も織り交ぜながら、さまざまなテーマで駆けめぐりました。

 ここまでは1月中のことですが、一年を通して、「テーマ編」で日本を駆けめぐったのです。12月に入ってからは   「岬めぐり(逗子編)」
  「ツーリングマップルツーリング(関東・P25八王子編)」
  「日光例幣使街道1」
  「横浜探訪」
  「楢葉(焚火ミーティング)」
  「伊豆諸島(神津島編)」
  「ツーリングマップルツーリング(関東・P35青梅編)」
  「日光例幣使街道2」
  「伊豆諸島(八丈島編)」
とつづけ、12月15日現在までのVストローム250の走行距離は7万9533キロになりました。

 そのうち2万5296キロは「70代編日本一周」の第1部ですので、第2部では5万4237キロを走ったことになります。12月30日〜12月31日の「伊豆半島一周」でもって、15ヵ月に及ぶ「70代編日本一周」は終了します。

 2019年は、また新たな気持ちで日本を世界をバイクで走りたいと思っていますので、みなさんのご声援、応援をよろしくお願いします。

2019年1月1日
賀曽利隆

『ツーリングマップル東北』の始まり

『アウトライダー』1997年4月号より

すべては桑原さんからの1通の手紙で始まった!

 今からちょうど2年前のことになるが、1995年2月に1通の手紙をもらった。

「突然にお手紙を差し上げる失礼をお許しください。さてご多忙のことと存じますが、賀曽利様にお願いがございまして、文書にてご連絡させていただきました。私どもは現在、日本全土を網羅した新しい道路地図を製作中でありますが、その中でも林道と峠に注目しており、そのための各種資料集めを行っております。つきましては日本全土にわたりツーリングをされ、数々の著書を執筆されている賀曽利様にいろいろとお話をお伺いし、地図を利用される方々に紹介できる資料等をご提供願えないかと、お願い申し上げる次第です」

 ていねいにそう書かれてあった手紙の差出人は、ぼくが常日頃愛用している『2輪車ツーリングマップ』や各県ごとの『分県地図』を出している昭文社道路地図課の桑原和浩さんだった。手紙を受け取るのとほぼ同時に電話をもらい、東京・市ヶ谷の昭文社本社で桑原さんに会った。

 桑原さんは九州男児の熱血漢で、バイク大好き人間。通勤にも愛車のBMWR1100Gを使っている。警視庁第1機動隊の猛者だったが、どうしてもバイクに関わる仕事をしたいと、昭文社に「押しかけ入社」をしたという異色の人材。ぼくはまだ若い20代の桑原さんがすごく気に入った。気持ちが一直線で、今の冷めた時代には珍しいほどの一生懸命さを体全体で表現できる人なのだ。この桑原和浩さんこそ、『ツーリングマップル』の仕掛け人なのである。

昭文社の「地図プロ軍団」とのうれしい出会い

 桑原さんと出会ってほんとうによかったと思ったのは、石原博道さんや山口賢司さん、隈部元英さんら、昭文社の「地図プロ軍団」のみなさんと知り合えたことだ。

 ぼくは「地図大好き人間」。本誌(アウトライダー誌)連載の「秘湯めぐりの峠越え」で何が楽しいかといえば、温泉宿に泊まり、温泉につかり、夕食を食べたあとで、部屋に広げた地図を見る時間。それはまさに至福の時といっていい。もう何もいらない、地図さえあればという気分になるほどなのである。

 このようにツーリングに出たときはもちろん、家にいるときでもぼくは地図をよく見る。30分でも1時間でも、夢中になって地図を見る。ぼくにとって、地図ほど夢をかきたててくれるものはない。1枚の地図を机の上に広げ、日本でも世界でも、好きなところを自由自在に「机上ツーリング」をしている。ガソリン代ゼロ、食費ゼロ、宿泊費ゼロの、きわめて安上がりのツーリングなのである。

 そんな地図大好き人間のカソリなので、昭文社の地図プロ軍団との出会いはうれしいものだった。みなさんの話を聞いて驚かされたのは、豊富な知識と情報量、それと地図へのものすごいこだわり。さすが地図プロ軍団。

 桑原さんの上司の石原さんには、ゴッソリと日本の峠の資料をいただいた。それを見て、まだ自分の越えていない峠がいくつもあることを思い知らされた。それだけではない。街道や岬、滝、展望ポイントなどへのこだわり、造詣の深さにはずいぶんと教えられることが多かった。

「みちのくライダー・カソリ」の誕生!

 さて、『ツーリングマップル』である。桑原さんは昭文社に「押しかけ入社」したような人なので、パワーが満ちあふれている。そんな桑原さんのパワーにカソリ、グイグイ押し込まれてしまった。

「カソリさん、じつは今度、『2輪車ツーリングマップ』を大改定するんですよ。つきましてはカソリさんに、その監修をお願いしたいのです」

「ま、待ってください。桑原さん、ぼくはそういうのはダメなんですよ」

 なにしろ、「世界を駆けるゾ!」と叫びつづけ、「生涯旅人!」をモットーにしているカソリなので、ぼくにとって興味があるのは現場のみというか、実際に自分自身でバイクを走らせ、自分自身の目でいろいろなところを見てまわることだけなのである。

 それではということで、改定版の「東北編」をぼくがやらせてもらうことにした。もちろん監修としてではなく書き手としてである。なぜ東北かといえば、『2輪車ツーリングマップ』の中でも「東北編」が一番売れなかったからだ。それともうひとつ、この数年来、東北にはすごく心をひかれ、何度となく足を運んでいたからだ。東北には味がある。かめばかむほど、ジワーッとにじみ出てくるような味なのである。それが東北。

 1年間の時間をもらい、さっそく東北の各地をバイクで走り始めた。1995年はぼくにとってはまさに「東北イヤー」。「みちのくライダー・カソリ」の誕生といったところなのである。

 この1年間というもの、すべてを東北に結びつけた。昭文社の取材で東北をまわるだけでなく、北海道への行き帰りを東北経由にしたり、『月刊オートバイ』の「峠越え」の連載を東北にしたり、『バックオフ』では東北の林道を総なめにする「みちのく5000」の連載を開始したり、『月刊旅』の取材では東北の温泉をめぐり、1000湯達成の温泉も東北にした。

東北のこだわりポイント。峠、温泉、名物料理…

 このようにして東北全域の資料や最新の情報を集めたのだが、一連の東北取材行の中でこだわったのは「峠のカソリ」なので、何といっても峠。その峠の中でも、中央分水嶺の峠にはとくにこだわりを持って越えた。中央分水嶺というのは「カソリ造語」だが、太平洋と日本海を分ける日本列島の背骨になる分水嶺のこと。東北でいえば奥羽山脈が中央分水嶺になっている。那須火山帯のほぼこの線に重なっているので、火山の噴出によってわかりにくくなっているところもあるが…。

「奥羽」というのは太平洋側の奥州と日本海側の羽州の合成語。奥羽山脈の中央分水嶺の峠を越えるということは、東北の2つの世界を見ることなのである。東北のツーリングコースの中でも、この奥羽山脈の中央分水嶺の峠越えコースが一番おもしろいと思っているので、『ツーリングマップル』では特別に「中央分水嶺マーク」を作ってもらった。

 峠と街道は密接に結びついているが、国道のルートナンバーとは別に昔からの街道名をのせるようにし、街道へのコメントを多くした。1本の街道でも峠を境にして街道名が変わることがよくあるので、その点をとくに注意した。

 こだわりの2点目は温泉だ。「日本中の温泉に入るゾ!」を大きな目標にしているカソリなので、1湯でも多くの温泉をと、もうフラフラになりながらもバイクを走らせて温泉に入りつづけた。1日に10湯は当たり前。多い日には20湯近くに入った。湯あたりし、心臓の鼓動が乱れ、「ヤバイな、これは…」と、不安にかられることもあった。まあ、それはさておき、北海道や信州も温泉の多いところだが、ぼくは東北が日本一の温泉地帯だと思っている。温泉の数が多いだけでなく、名湯や秘湯が数多くあるのが東北だ。

 混浴の温泉が多いのも東北の特徴。青森県の酸ヶ湯温泉、青荷温泉、岩手県の松川温泉、大沢温泉、秋田県の赤川温泉、澄川温泉…とあげていけば、もうきりがないほど。それら混浴の温泉では何度もいい思いをした。混浴の温泉というと、オバチャン、オバーチャンをイメージするが、数をこなすと若いみちのく美人と一緒になるチャンスもけっこうあるものだ。ということで『ツーリングマップル』には極力、混浴情報も入れてある。願わくば女性ライダーのみなさんが、「あ、ここに混浴の温泉がある!」といって、1人でも多くの人が混浴の湯に入ってくれるといいのだが。それは甘いか…。

 東北の温泉のよさはそれだけではない。共同浴場や公衆温泉浴場が数多くある。それらをひとくくりにして「共同湯マーク」を作ってもらったが、安い入浴料で入れるこれら東北の共同湯にもどんどん入ってもらいたい。

 東北の温泉のよさはまだある。宿泊料金の安い温泉宿が多いのだ。料金が安いだけでなく、「えー!」と驚きの声を上げてしまうほど、食事のいい温泉宿も多い。ということで、「おすすめの宿マーク」も作ってもらった。

 第3のポイントは食べ物だ。なにしろ食文化研究家のカソリなので、行く先々で土地の食べ物をできるだけ食べるようにしている。名物料理は借金をしてでも食べたほうがいい。使われる食材や料理法、保存法、味の濃淡などを通して、それぞれの土地の風土、土地の歴史といったものが、くっきりと浮かび上がってくる。このような郷土料理、名物料理、食の名産品などを、やはり特別な「食べ物マーク」つきでコメントしている。

「峠越え林道」も強力プッシュ!

 そしてもちろん、「オフロードライダー・カソリ」なので、林道情報には抜かりがない。ダート区間の距離や路面状況などできるだけコメントを多くしている。林道の中でも、とくに峠越えの林道には力を入れてコメントしている。ただ林道というのは、崩落などでしばしば通行止めになるし、ゲートが降りて通行止になっているケースも多いので、そのようなときはすぐさま別ルートを選択できるような柔軟さを持って走ってもらいたい。

 ということで桑原さんに約束した1年後の昨年(1996年)3月には、全部で1500項目ぐらいのコメントを用意して手渡した。その直後、2人で残雪の奥羽山脈を走った。ひなびた温泉宿に泊まり、雪道にアタックし、峠を越えた。そのときの写真が『ツーリングマップル東北』の巻頭のカラーページ。みなさん、ぜひとも見てください。完成した『ツーリングマップル東北』を見て思うことは、ぼく自身がこれを持って今すぐにでも、東北の山野を駆けめぐりたいということだ。

1997年に発売された『ツーリングマップル東北』
▲1997年に発売された『ツーリングマップル東北』
巻頭の写真ページ「賀曽利隆のみちのくおすすめルート」
▲巻頭の写真ページ「賀曽利隆のみちのくおすすめルート」
P20の「富岡」
▲P20の「富岡」

ツーリングマップル東北 2018年版発売

絶景の連続「カソリの旅2018」を詳細フォロー

『ツーリングマップル東北』の2018年版が発売されました。できたてのホヤホヤの『ツーリングマップル東北2018』を見ていると、胸が熱くなってきます。2017年の1年間をかけて東北をまわった努力が報われたような気分です。
7月のカメラマン同行取材の3日間は奇跡の快晴つづきだったので、表紙も裏表紙も、挿入されている冊子「全力取材2018東北」も、とにかく写真がすばらしいのです。まずはみなさんにそれを見ていただきたいという気持ちでいっぱいです。
絶景ルートを忠実にフォロー
さらに2018年版には通常版にもR版にも、巻末に写真ページが6ページ、入っています。題して「カソリの旅2018」で、カメラマン同行取材の第1日目のカソリ旅が時系列に並んで見られるようになっています。5時17分の新菊島温泉(福島)にはじまり、磐梯吾妻スカイライン→蔵王エコーライン→月山越えと東北の絶景ルートを次々に走破し、最後は山形・秋田県境の三崎で日本海に落ちる夕日を見るという1日の旅。三崎到着は18時59分でした。みなさんがこのカソリ旅のルートをフォローできるように、写真のみならず全体のルートマップと3枚の詳細なパート編のルートマップものっています。
イザベラバードの足跡を追う
2018年版の実走取材では山王峠(栃木・福島)から青森港までイサベラバードの足跡を追いましたが、そのコメントも新たに多数、のせています。イサベラバードは明治初期に東北を縦断したイギリス人女性で、『日本奥地紀行』という名著を残しています。当時の東北の様子が詳しく描かれいるので、この150年あまりの東北の変化がよくみてとれるのです。
最新ダムカード情報を掲載
それと2017年版にひきつづいて、2018年版でもダムカードを配布しているダム情報をのせています。新たにダムカードの配布を始めた東北のダムと、『ツーリングマップル東北』に収録されている東北に隣接する新潟県や北関東のダム情報ものせています。
コメントを多数更新
2度にわたる「東北一周」や「東京→青森・林道走破行」などで得た新たな情報も多数、のせています。『ツーリングマップル』は毎年、進化しています。新しいコメントを多数のせ、さらに古くなって現状とは合わなくなったコメントを多数、削除しています。 ということでみなさん、ぜひとも『ツーリングマップル東北2018』を実際に見てください。カソリが渾身の力を込めてまわった東北2万キロで得た様々な旅情報が盛りこまれています。どうぞ『ツーリングマップル東北2018』を持って東北を駆けめぐって下さい。東北は最高におもしろいですよ〜!
賀曽利 隆
ツーリングマップル
ツーリングマップルR
電子書籍版が完成しました。 詳しくは、昭文社のニュースリリースをご覧ください。 http://www.mapple.co.jp/mapple/news/

新年のご挨拶

みなさ〜ん、あけましておめでとうございます。
 ぼくは「30代編日本一周」(1978年)を皮切りに、「40代編日本一周」(1989年)、「50代編日本一周」(1999年)、「60代編日本一周」(2008年)と、ほぼ10年ごとの年代編日本一周を4度、おこなってきました。そのほか「島めぐり日本一周」、「温泉めぐり日本一周」、「林道日本一周」と3度のテーマ編日本一周もおこなってきました。  昨年は9月1日で70歳になるのを機に「70代編日本一周」(2017年)に出発しました。「東日本編」と「西日本編」の2分割での「日本一周」でしたが、12月17日までの間の94日間で、スズキのVストローム250で2万5296キロを走りました。日本の全都道府県、全県庁所在地、全旧国(68国)を走破する「日本一周」でした。 「70代編日本一周」のゴールシーンです。2017年12月17日に東京・日本橋に到着しました
▲「70代編日本一周」のゴールシーンです。2017年12月17日に東京・日本橋に到着しました
 今年は「60代編日本一周」の時と同様に、「70代編日本一周」の第2部を計画しています。Vストローム250を走らせ、1月1日から12月31日まで、さまざまなテーマで日本を駆けまわろうと思っています。  ちなみに「60代編日本一周」の第2部は次のようなものでした。  2009年4月1日〜2009年10月28日(151日)    「四国八十八ヵ所めぐり」 スズキ・アドレスV125G    「日本百観音霊場めぐり」 スズキ・アドレスV125G    「奥の細道紀行」スズキST250    「東北四端紀行」スズキDR−Z400S    「奥州街道を行く!」スズキDR−Z400S    「北海道遺産めぐり」スズキDR−Z400S    全走行距離41609キロ  ということで「70代編日本一周」の第2部では、日数、距離とも「60代編日本一周」のときを上回りたいのです。  元旦の「初詣ツーリング」、「初日の出ツーリング」を皮切りに、「富士山一周」や「厳冬期の信州ツーリング」、「三宅島&八丈島の伊豆七島ツーリング」…など、様々なテーマでまわります。  1月から6月までの前期では、東北太平洋岸の全域を走る「鵜ノ子岬→尻屋崎」をメインにします。7月から12月までの後期では、沖縄本島からさらに南へ、宮古・八重山諸島を走る「南島紀行」をメインにしたいと思っています。カソリのバイク旅の二大テーマは峠と温泉ですので、「峠越え」ではより多くの峠を越え、「温泉めぐり」ではより多くの温泉に入ろうと思っています。
 2018年1月1日  賀曽利隆