30年目の「六大陸周遊記」[085]

[1973年 – 1974年]

ヨーロッパ編 8 ローザンヌ[スイス]→ パリ[フランス]

ローザンヌのユースホステル

 スイス・レマン湖畔、ローザンヌのローザンヌ中央駅構内のツーリストインフォメーションはまだ開いていた。

 ラッキー!

 ここで地図をもらい、ユースホステルの場所を聞く。2夜連続の恐怖の寒さの野宿をしたので、どうしてもひと晩、暖かい所で寝たかった。

 駅前からトロリーバスに乗り、教えてもらった停留所で降りようとすると、何と運転手さんは「料金はいいから」といってタダにしてくれた。

 スイスはドイツ語とフランス語、イタリア語が公用語なので、運転手さんには最初にドイツ語で「ダンケシェーン」、つづいてフランス語で「メルシー」、最後にイタリア語で「グラツィェ」とお礼をいった。ニコッと笑ってくれた運転手さんの顔が忘れられない。

 ユースホステルに到着したのは夜の9時過ぎ。夕食は7時から8時まででとっくに過ぎていたが、うれしいことに自分用に1人前を用意してくれた。ラッキーつづきのローザンヌだ。

 夕食を食べ終わるとシャワーを浴び、寒さの心配をすることなく寝られる。

 ここでは南アフリカに長く滞在していたというスイス人、アメリカに留学していたフランス人、それと2人のチュニジア人と同室になった。ひとしきり彼らと話すと、暖かなベッドにもぐり込みグッスリと眠った。寒くて夜中に目を覚ますこともなかった。

列車でスイス・フランス国境へ

 ローザンヌからフランス国境のバリョルベまでは列車で行くことにした。距離は50キロもないのに、料金は8フラン40。日本円で800円ほど。

「冗談じゃないよ」
 といいたくなるくらいに高い。

 10時20分発の列車はガラガラ。ローザンヌを出ると、アルプスの山々は遠ざかり、前方にはスイス・フランス国境に連なるジュラ山脈が見えてくる。列車はガラガラ状態のままバリョルベ駅に到着した。

 ここでの国境通過はフリーパスとはいかず、スイス側、フランス側ともにけっこう調べられた。

雨のパリに到着!

 フランス側に入るとヒッチハイク開始。

 国境からポンタルリエの町までほとんど待たずに乗せてもらった。そこからさらに隣町のレビエールまでも、やはりほとんど待たずに乗せてもらった。

「これはいいぞ!」
 と喜んだが、その先がきつかった。

 待てど暮らせど乗せてもらえない。

「よし、歩こう」

 覚悟を決めてドールに通じる道を歩く。

 ジュラ山脈を抜け出し、平原へと下っていく。小麦畑やトウモロコシ畑が広がっている。フランスは「豊かな農業国」と思わせるような田園風景だ。

 夕方近くになって、やっとドールまで乗せてもらった。

 ドールからはほんとうにラッキー。何とパリまで行く車に乗せてもらったのだ。

「ドール→パリ」間は400キロ近くある。車はオートルート(高速道路)に入ると一気にパリへ。その日のうちにパリに到着した。

 パリの中心街で車を降りる。冷たい雨が降っている。さっそくひと晩の寝場所を探す。

 それほど歩かないうちに、道路をまたぐ陸橋をみつけた。その陸橋の下で寝る。上の道を通る車の振動、下の道を通る車の騒音はあったが、雨に濡れながら寝るよりはよっぽどいい。

 あるもの全部を着込んでシュラフにもぐり込み、寒さに震えながら眠った。