30年目の「六大陸周遊記」[075]

[1973年 – 1974年]

サハラ砂漠縦断編 5 ビルモグレイン[モーリタニア] → アアイウン[スペイン領サハラ]

サハラ越えのアフリカ人旅行者

 モーリタニア北部のオアシス、ビルモグレインでは警察に泊めてもらった。

 朝から暑い。警察の前が食堂で、パンとコーヒーの朝食を食べる。砂漠で飲むコーヒーはうまかった。

 バッグがとうとうダメになり、キューバ製の小麦粉を入れる布袋を買う。その中に荷物を突っ込んだ。

 その店は雑貨屋で、店の片隅は床屋になっている。そこで髪の毛をバッサリ切ってもらい、丸坊主同然にした。

 暑くて暑くてどうしようもない。強烈な暑さにやられ、郵便局の建物の影でゴロゴロしている。そこでは何人ものアフリカ人旅行者に出会った。

 セネガル人4人とモーリタニア人1人のグループ。ガンビア人6人のグループ。彼らは全員、アルジェリアのティンドウフに行くトラックを待っているのだ。アルジェリアからモロッコ、スペイン経由でフランスへ。全員がフランスで働きたいといっている。

 飛行機代を払うほどのお金は持っていないので、陸路、サハラ砂漠を越えてヨーロッパを目指すのだ。だが、ビルモグレインからティンドウフに行く車はきわめて少ない。もう1週間以上も待っているという。

 なぜスペイン領サハラ経由でモロッコに入らないのか、と聞いてみた。その方がはるかに交通量は多いのだ。すると、スペイン領サハラはアフリカ人旅行者の入国を認めていないからだという。

流砂を越えて

 その日の午後、スペイン領サハラの首都アアイウンに向かうトラックが、4台一緒になって出発した。そのうちの1台に乗せてもらったが、それらのトラックはアアイウンから来たもので、帰りは空荷だ。

 4台のトラックがサハラを突き進む光景は圧巻。長く延びる砂塵を巻き上げていく。

 流砂地帯を越える。まさに「砂の河」で、1本の川幅は100メートル前後はある。トラックは次々にスタックしてしまう。そのたびに砂を掘り、サンドマットを敷いて砂の河を渡っていく。

 夕日が地平線に近づき、やがて落ちていく。

 夜になると、突然、突風が吹き荒れる。トラックの荷台に乗っているので、小石まじりの砂がビシビシバシバシ顔に当る。

 前方にポツンと小さな灯が見えてきた。それはスペイン領サハラの国境守備隊の要塞だ。その夜は国境の町ゲルタゼムールで泊った。

ビルモグレインを出発。一望千里のサハラを行く
ビルモグレインを出発。一望千里のサハラを行く
木陰で小休止
木陰で小休止
スペイン領サハラの一筋の道を行く
スペイン領サハラの一筋の道を行く
スペイン領サハラの風景
スペイン領サハラの風景
アアイウンの町並みが見えてくる
アアイウンの町並みが見えてくる
首都アアイウンに到着

 夜が明ける。山がちな風景。国境の税関、イミグレーション、警察などはすべて白い建物。スペインを感じさせる洒落た建物だ。

 入国手続きをすませ、首都アアイウンを目指して出発。じきに山々は後方に去り、平坦な砂漠の風景に変わる。

 砂はそれほど多くない。その中に車1台分が通れるくらいの、幅の狭い舗装路が延びている。

 国境から260キロ、スペイン領サハラの首都アアイウンには、まだ日の高いうちに着いた。

 猛烈なのどの渇きにたまらず、店に飛び込み、冷えたコカコーラーをたてつづけに4本飲んだ。まさに生き返るような思い。それとともに、アアイウンに着いた喜びがジワジワと湧き上がってくる。

 このルートでのサハラ砂漠縦断の峠を越えたのだ。

アアイウンに到着
アアイウンに到着
アアイウンに到着
アアイウンに到着